「技術士って、どのくらい稼げるの?」
技術士取得を目指す技術者としては気になるポイントでしょう。
この記事では、技術士として実際に建設コンサルタントで働く筆者が、公的な統計データから自身のリアルな転職経験まで、技術士の年収に関するあらゆる疑問にお答えします。

僕は最年少で技術士を取って人生が変わったよ!
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技術士の平均年収はどのくらい?男女別・経験年数別


厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査(職種DB第1表)」によると、技術士全体の平均年収は約667万円となっています。
一方、国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、一般労働者全体の平均年収は約436万円となっており、一般的な平均年収をはるかに上回ることがわかります。
項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年収 |
---|---|---|---|
技術士 | 46.1歳 | 13.7年 | 約667万円 |
全体平均 | 46.7歳 | 12.4年 | 約436万円 |
出典:
- 厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(職種DB第1表)」
- 国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査」
技術士の平均年収【男女別】
性別では、男性が約673万円、女性が573万円となっており、一見男性が優位のようにも見えますが、平均年齢、勤続年数にも大きな差があり、同条件で考えると大きな差はないともいえるでしょう。
項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年収 |
---|---|---|---|
男性 | 46.6歳 | 14.0年 | 約673万円 |
女性 | 39.8歳 | 8.8年 | 約573万円 |
出典:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(都道府県×職種DB )」
技術士の平均年収【経験年数別】
経験年数別では、下表のようになっております。
- 女性は1~9年目よりも0年目の方が年収が高くなっています。これは、出産などにより時短で働く技術士なども多く、このような結果となっていることが想定されます。
- 逆に考えると、技術士を持っていればそのような働き方でも受け入れてくれる企業が多いということですね。
項目 | 経験年数 | 平均年収 |
---|---|---|
男性 | 経験年数計 | 約417万円 |
0年 | 約290万円 | |
1~4年 | 約347万円 | |
5~9年 | 約368万円 | |
10~14年 | 約411万円 | |
15年以上 | 約472万円 | |
女性 | 経験年数計 | 約325万円 |
0年 | 約330万円 | |
1~4年 | 約303万円 | |
5~9年 | 約312万円 | |
10~14年 | 約346万円 | |
15年以上 | 約364万円 |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(平成30年)」



技術士はまさに「手に職」と言えるね!
なお、こちらの表は”所定内給与額”の合計を示すものであり、賞与等は含まない点には注意してください。
技術士の年収は所属によっても差があり?―部門・企業規模・都道府県による違い


技術士の資格は、どの部門で取得し、どのような環境で働くかによって、年収に大きな差が生まれます。あなたの専門性とキャリアプランが、最終的な収入を大きく左右するのです。
部門ごとの違い:建設部門の圧倒的優位性
技術士には、建設部門、電気電子部門、機械部門など、全部で21の部門が存在します。その中でも、転職市場で最も需要が高く、年収も高い傾向にあるのが建設部門です。
- 建設部門: インフラ整備や社会資本の維持管理という、日本の根幹を支える役割を担います。公共事業が中心となるため、景気に左右されにくい安定した需要があり、多くの企業が技術士(建設部門)を求めています。
- 電気・機械部門: プラント設計や大規模な工場設備など、専門性の高いプロジェクトに携わることが多い部門です。特定の技術に特化しているため、その分野でのスペシャリストになれば、高い年収が期待できます。
- 環境部門: 環境アセスメントや再生可能エネルギーなど、社会的な関心が高まっている分野です。ニッチな分野で高い専門性を持つ技術士は、希少価値が高く、特定の企業やプロジェクトで高収入を得ることも可能です。



建設業界、建コン業界ではもちろん「建設部門」が最も優位に評価されるよ!ただ、目指す分野によっては他の部門も有効になるから一概には言えないね!
技術士の平均年収【企業規模別】
技術士の年収は、所属する会社の規模によりも違いがあり、下表のとおり、大手企業ほど年収が高い傾向にあります。
技術士の平均年収【企業規模別】
企業規模 | 平均年収(万円) |
---|---|
10~99人 | 約606万円 |
100~999人 | 約669万円 |
1,000人以上 | 約752万円 |
出典:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(都道府県×職種DB )」



これは技術士に限った話ではなくどの業界でも同じことが言えるね!
【都道府県別の年収】都市部と地方の年収差
続いては、都道府県別の技術士の年収です。男性では1位が滋賀県の857万円、最下位が青森県の394万円、女性では1位が富山県の1,129万円、最下位が北海道の343万円となっています。
技術士の平均年収【都道府県別】
順位 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
都道府県 | 平均年収(万円) | 都道府県 | 平均年収(万円) | |
1 | 滋賀県 | 857 | 富山県 | 1,129 |
2 | 埼玉県 | 853 | 宮城県 | 831 |
3 | 沖縄県 | 836 | 兵庫県 | 643 |
4 | 徳島県 | 816 | 東京都 | 641 |
5 | 宮城県 | 789 | 千葉県 | 626 |
: | ||||
43 | 和歌山県 | 451 | 奈良県 | 507 |
44 | 鹿児島県 | 438 | 広島県 | 472 |
45 | 長崎県 | 436 | 熊本県 | 455 |
46 | 高知県 | 410 | 鳥取県 | 403 |
47 | 青森県 | 394 | 北海道 | 343 |
出典:厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査(都道府県×職種DB )」
- 1位と最下位の差は男性では2倍以上、女性では3倍以上となっています。
- 女性の1位が1000万円をこえているのも注目ポイントです。
技術士資格が年収に与える影響


技術士資格は、単なる知識の証明ではありません。あなたの市場価値を劇的に高め、年収アップに直結する強力な武器となります。特に、所属企業や転職市場での評価、そして独立という選択肢に大きな影響を与えます。
- 資格手当と基本給アップ
- 転職市場での評価UP
- 独立技術士という選択肢
資格手当と基本給アップ
多くの建設コンサルタント会社では、技術士資格を持つ社員に対して資格手当を支給しています。その額は企業によって異なりますが、月1万円から10万円程度が一般的です。例えば、月5万円の手当が支給される場合、年間で60万円の収入増となり、これは無視できない金額です。
また、資格手当だけでなく、技術士資格は基本給査定の際にも高く評価されます。技術士を取得することで、昇進・昇格の要件を満たしたり、人事評価が上がることで、結果的に基本給が引き上げられるケースも珍しくありません。
他の資格との比較
建設業界、建コン業界には、技術士以外にも多くの資格が存在します。
- RCCM(シビルコンサルティングマネージャー): 技術士と並んで評価されることが多い資格です。しかし、技術士に比べると年収への影響は限定的で、多くの企業では技術士手当よりも低い金額が設定されています。
- 建築士: 建築業界では非常に重要な資格ですが、建設コンサルタント業界では技術士ほどの評価を得られないこともあります。
技術士は、その難易度と専門性の高さから、他の多くの資格を上回る待遇を受けられることが一般的です。
転職市場での評価UP
技術士資格は、転職において最も強力な武器となります。特に、売り手市場である建設コンサルタント業界において、技術士の資格は「即戦力」の証明であり、企業にとって喉から手が出るほど欲しい人材であることを示します。
これは、私自身のリアルな転職経験からも裏付けられます。
技術士の私の実体験
新卒で入社した会社は、月100時間残業が当たり前、土日も頻繁に出勤するような、いわゆるブラック企業でした。年収は600万円ありましたが、このままでは家族との時間も取れないと思い、3年目で転職活動を開始。しかし、内定をもらっても提示される年収は400万円程度で、生活が厳しくなるため転職を断念しました。このとき、私は技術士資格を持っていませんでした。
「このままでは何も変わらない」と奮起し、在職中に技術士を取得。
技術士取得後に再度転職活動に挑戦すると、驚くほど状況が変わりました。
5社ほど内定をもらうことができましたが、いずれも550万円以上の年収であり、最終的には年収650万円の企業への入社を決意しました。
技術士を取得したことで、年収を維持しながら、働きやすい会社へ転職するという理想を叶えることができました。技術士資格がなければ、この選択肢はなかったでしょう。技術士資格は、単に年収を上げるだけでなく、ワークライフバランスやキャリアの選択肢を広げるための「強力なパスポート」なのです。
なお、転職を考えるなら今の時代は転職エージェントが必須です。建設業界でおすすめの転職エージェントについては、こちらの記事で解説しております。


独立技術士という選択肢
技術士資格は、企業に属するだけでなく、独立して働くという選択肢も広げます。成功すれば年収1,000万円超えも十分に可能ですが、案件獲得や経営リスクを自己で背負う覚悟が必要です。専門性を活かし、コンサルティングや執筆活動、技術指導などを通じて収入を得るという、新たな道が開けます。
独立技術士は、自身の技術力や人脈がそのまま年収に反映されるため、青天井の収入を得られる可能性があります。
技術士で年収1,000万円を目指すためのキャリア戦略


技術士の年収をさらに高め、年収1,000万円という大台を目指すには、明確なキャリアプランが不可欠です。資格を取得したからといって、自動的に高収入が得られるわけではありません。技術士資格を最大限に活かすための戦略を立てることが重要です。
専門性を極める:ニッチな分野での絶対的な優位性を築く
誰もが持つ専門性ではなく、希少性の高い分野で突出した存在になることが、年収アップへの近道です。例えば、以下の分野は今後ますます需要が高まり、スペシャリストの市場価値が大きく跳ね上がると予想されます。
- 防災・減災対策: 地震や豪雨などの自然災害が増加する中で、地盤改良やインフラの耐震化に関する技術士は非常に重宝されます。
- ICT活用・DX推進: BIM/CIMなどの最新技術をインフラ設計・管理に導入できる技術士は、業務効率化のキーマンとして高く評価されます。
- 老朽化対策: 既存のインフラを維持・管理するための専門知識を持つ技術士は、今後も安定した需要が見込めます。
特定の分野で深い知識と豊富な経験を積むことで、あなたは代替のきかない存在となり、企業からの高い報酬を引き出すことが可能になります。
総合技術監理部門を目指す:技術士の最高峰
技術士の中でも最難関とされる総合技術監理部門を取得すれば、さらに希少な存在となり、年収1,000万円超えも現実的な目標となります。この部門は、複数の専門技術を統合し、プロジェクト全体を俯瞰する能力が求められるため、取得者は企業内で非常に重宝されます。
管理職・マネジメントに進む:チームを率いるリーダーへ
技術士として経験を積んだ後は、技術力に加え、プロジェクトを統括する管理職を目指すのが王道ルートです。
技術者としてだけでなく、組織を動かすマネージャーとして活躍することで、年収は大きく上がります。多くの企業では、管理職になることで基本給が大幅にアップするだけでなく、役職手当やボーナスの支給額も大きくなります。
技術士年収の将来展望と注意点


技術士の将来性は非常に明るいと言えますが、注意すべき点もあります。
明るい将来展望
- 技術者単価の上昇トレンド: 国土交通省が定める「設計業務委託等技術者単価」は年々上昇傾向にあります。これは、国が技術者の労働市場価値を高く評価していることを示しており、今後も技術士の年収は上がっていくと期待できます。
- 建設コンサルタント業界の将来性: AI・DX等の発展により、一部では「建設コンサルタントはなくなるのでは?」といった声も聞こえてきます。これについては基本的に心配不要と言えます。その理由については、こちらの記事で解説しております。


注意すべきリスク
- 景気や公共投資の動向: 公共事業に依存する部分は大きいため、景気や国の政策によって仕事の量が変動する可能性があります。
- 責任の重さ: 年収が上がるにつれて、任される仕事の責任も重くなります。技術的判断のミスが大きな事故につながることもあるため、常に高いプロ意識が求められます。建設コンサルタントの厳しさについては、こちらの記事で解説しています。


【総括】技術士の年収はいくら?年収1000万円は可能?
今回は、技術士の年収について、さまざまな角度から解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- 技術士資格は、667万円と高年収。
- 部門、企業規模、経験年数によって年収に大きな差が出る。
- 技術士を取得すれば、年収を維持しながら働きやすい会社への転職も可能です。
- 将来的には、キャリア戦略次第で年収1,000万円超も十分に目指せます。
技術士は、あなたのキャリアを理想の形に築いていくための強力なパスポートです。あなたの努力と戦略次第で、年収を大きく伸ばし、理想の働き方を手に入れることができます。